パツリンは何に発生するのか
パツリンはかび毒の一種で、青かびのペニシリウム属やアスペルギルス属のかびが産生します。1942年の発見当初は人の役に立つ抗生物質として注目されましたが、その後人に対する強い毒性が確認されたため、抗生物質としての利用は残念ながら断念しました。パツリン汚染が高い食品として知られるのがりんご果汁です。
汚染の原因は主に二つ。一つめは台風などの強い雨風によりりんごの実が落下し、果実に傷がつき、その損傷部から土壌中のかびが侵入し、果実の中で増殖しパツリンを産生すると考えられています。二つめはりんごの収穫や選別、箱詰め、運搬時などに傷ついた損傷部からかびが侵入し、不適切に貯蔵され、パツリンを産生するというものです。
パツリン汚染を防ぐために
- 収穫・運搬時は果実に土壌がつかないようにする(コンテナを直接地面に置かないようにする)
- 果実を取り扱う時は傷がつかないように丁寧に扱う
- できるだけ低い温度で果実を貯蔵する
- 搾汁前に果実を丁寧に洗い、腐敗した箇所は使わない
などの対策をとる必要があります。
台風などで落下したりんごはリンゴジュースやリンゴジャムなどの加工品にするケースも多くありますが、その場合丁寧に洗浄し、傷んだ部分は完全に除去して加工することが必要です。パツリンは熱に強い性質のため、加熱加工するジャムもこれらのことを徹底することが求められます。
アスコルビン酸はパツリンを焼失させる働きがあるので、アスコルビン酸を含む柑橘類にはパツリンは発生しません。
パツリン汚染は日本国内だけでなく、ヨーロッパ諸国でも問題になっています。
パツリンの危険性
パツリンは強い毒性を持ち、細胞膜に対する膜透過性を阻害する特性を持っています。
毒性については、マウスへの2年間の経口投与試験等において体重増加抑制、特に急性毒性としては消化管の充血・出血・潰瘍等の症状等が認められています。