カツオブシコウジカビ(ユーロチウム)の特徴

日本食を作るうえで欠かせないのが出汁。その中でも一般的なのがかつお節です。
かつお節の表面にはユーロチウム(和名:カワキコウジカビ・カツオブシコウジカビ)という麹かびの一種がついています。ちなみにかび毒を産生しない「優良かび」とも言われています。
多くのカビは高温多湿な環境を好みますが、乾燥した環境にて水分を吸収しながら繁殖するのが特徴です。このことで他の微生物が繁殖できなくなるため、保存性も高まる利点もあります。
かつおを煮て燻した「荒節」と呼ばれるものにユーロチウムをつけると、表面から内部までの水分をしっかりと吸い取り、なおかつさまざまな酵素を送り込みます。中でもたんぱく質分解酵素のプロテアーゼがアミノ酸に分解することで、主要なうまみ成分が徐々に引き出されていきます。

かつお節について

かつお節は作り方にもよりますが、生の状態から最短で1ヶ月程度、中には半年以上もの時間を要します。
まずはかつおの身を煮た後、薪で燻し、乾燥させます。これを荒節(あらぶし)と呼び、この時点で水分量はおよそ23%ほどに減ります。「花かつお」とよばれる商品は荒節を削ったものです。
江戸時代以前より荒節に近い加工法はあったものの、当時かつおの産地として名高い土佐(いまの高知県)から大阪へ運ぶ道中で、カビが生えてしまうことに悩まされていました。そこで、あらかじめ荒節に優良かびのユーロチウムを生やし、表面を守りながら運ぶという解決策が編み出されました。これがいわゆる1番カビといわれるものです。
1番カビを払い落として再度天日干しを行い、またカビ付けを行うと2番カビとなります。一般的に「枯節」はこの2番カビ以上のカビ付けを行ったものを指します。この作業を繰り返し3番カビ、4番カビ……と手間と時間をかけると、さらに熟成されて「本枯節」となります。メーカーや団体によって本枯節の定義は多少異なりますが、基本的には枯節以上にカビ付けを行ったものとされています。荒節に比べると魚の生臭さが少なく、かつお節独特の香りが漂うのが特徴。また、出汁は澄んだ黄金色となり、うまみ成分をしっかりと味わうことができる驚きの風味となるのです。