ケカビの特徴

ケカビ(毛カビ)はクモノスカビと同じケカビ科の藻状菌類で、特にケカビ属はムコール(mucor)とも呼ばれます。湿気のある有機物に菌糸を伸ばし、胞子嚢柄を伸ばしてその先端に胞子嚢をつけます。そして植物のように光の方に向かう屈光性もあります。
ケカビのコロニーは初期はふわふわとした白色や黄色ですが、成長するとやがて濃いグレー、またはくすんだ緑色になります。胞子嚢胞子が成熟すると胞子を放出し、その胞子が拡散し、繁殖します。土壌や糞のほか、植物の残骸や穀物、腐りかけの果物や野菜、乳製品などさまざまな湿った有機物に現れます。また、屋外の菌が窓や換気口などから建物内に侵入するため、住宅やオフィスなどでもコロニーは発生します。
その上、免疫力が低下している人の肺で増殖し、発熱や呼吸困難などの症状がみられるムコール症(ムコール症・接合菌症ともよばれる)を引き起こすこともあります。また、ムコールアレルギーを持つ人は胞子を吸い込むとアレルギー症状を引き起こすことがあるので注意が必要です。

ケカビから作られる食品

ケカビは麹菌などの他の真菌と同じように、アジアでは発酵食品などに利用されます。中国北京市の「青腐乳」は圧縮して水分をきった豆腐にケカビを付けて菌糸を成長させ、菌糸をふき取り塩漬けして発酵させたものです。発酵するとフェノールやトリメチルヒドラジンなど刺激が強い臭気成分を発生するので、独特の風味があります。塩気もかなり強いので、そのまま食べるというよりはお粥に少量トッピングとして使用したり、薬味として食べたりします。また、インドネシアの大豆を原料とした伝統的発酵食品、テンペは主に同じケカビ目クモノスカビで作られますが、少数ですがケカビを利用する生産者もいます。